月詠雨集/STRAWBERRY MOON/BERYLUNA月詠雨集/STRAWBERRY MOON/BERYLUNA

ひゃくいっぴきくるちゃんwithMozus.T

  • 物販商品(自宅から発送)
    発送までの日数:10日以内
    ¥ 700

A5/P48/¥700/全年齢 *** Twitter上で行っておりましたクルーウェル先生受けSS企画 #ひゃくいっぴきくるちゃんより、モゼクルSS十五本を加筆修正し再録、書き下ろし五本を加えたSS集です。 捏造設定・年齢操作等 なんでも許せる方向けとなっております。 *** (本文より)   『素直にさせて』  ……ふわぁ。  補習とはいえ、授業の最中に欠伸をするクルーウェルは珍しい。  基本的に、クルーウェルは真面目な生徒だ。  全体的に文系科目――特に魔法史は苦手らしいが、彼の授業態度に問題を感じたことはない。  それが今は、うつらうつらと姿勢が揺れて、もうすぐにでも机に伏せそうになっている。 「どうした? 眠いのか?」  ぽんぽんと髪を撫でてやれるのも、この場にいるのが彼だけだからだ。  授業中の居眠りに目こぼしをしてやるなど、こんな機会以外にはない。 「何かあったか? デイヴィス」 「……寝不足なんです、このところ」 「夢見でも悪いのか?」 「……そう、ですね」 「なんだ、歯切れが悪いな」 「……うん……」 「言いたくないなら言わなくてもいい」 「うん……」 「今なら眠れそうなのか?」 「……うん」 「それなら、もうおやすみ」 「でも……、」 「補習の続きは明日に回そう。お前に予定がないのなら」 「……うん」  縋り付いてくる小さな身体を抱き上げる。  頬を擦り寄せられて、驚いた。  ――無意識だろうが――……、  この子には、嫌われているものかと思っていたのだが。  細い子だ、と思った。  見た目からして華奢な体つきだが、それ以上に軽い。 「デイヴィス」  きちんと食べているのか、  思わず出そうになる小言を飲み込む。  身を守るように身体を丸める子供を連れて、ソファへと移った。  本当ならベッドに寝かせてやるのが一番なのだろうが、まさか隣で横になるわけにもいかない。  強く握りしめられたシャツは、この子が起きる頃には皺になっているだろう。  聞こえ始めた寝息に、小さく声をかける。 「良い夢を見られるといいな、デイヴィス」  それから、 「……ゆっくりおやすみ」  目が覚めたら、いつもの悪態がつけるほどには回復しているといい。  照れ隠しの可愛い言い訳になら、幾らでも付き合ってやろう。  そしてもし叶うのならば、  いつかの時に、彼の隠した小さな本音を聞かせてくれればいい。 「……まったく」  そう願っても、きっと私はこの先も、ことあるごとにこの子を叱ってしまうのだろう。  甘えるのが下手な、この寂しがり屋を。 (一部抜粋)

ひゃくいっぴきくるちゃんwithMozus.T
A5/P48/¥700/全年齢 *** Twitter上で行っておりましたクルーウェル先生受けSS企画 #ひゃくいっぴきくるちゃんより、モゼクルSS十五本を加筆修正し再録、書き下ろし五本を加えたSS集です。 捏造設定・年齢操作等 なんでも許せる方向けとなっております。 *** (本文より)   『素直にさせて』  ……ふわぁ。  補習とはいえ、授業の最中に欠伸をするクルーウェルは珍しい。  基本的に、クルーウェルは真面目な生徒だ。  全体的に文系科目――特に魔法史は苦手らしいが、彼の授業態度に問題を感じたことはない。  それが今は、うつらうつらと姿勢が揺れて、もうすぐにでも机に伏せそうになっている。 「どうした? 眠いのか?」  ぽんぽんと髪を撫でてやれるのも、この場にいるのが彼だけだからだ。  授業中の居眠りに目こぼしをしてやるなど、こんな機会以外にはない。 「何かあったか? デイヴィス」 「……寝不足なんです、このところ」 「夢見でも悪いのか?」 「……そう、ですね」 「なんだ、歯切れが悪いな」 「……うん……」 「言いたくないなら言わなくてもいい」 「うん……」 「今なら眠れそうなのか?」 「……うん」 「それなら、もうおやすみ」 「でも……、」 「補習の続きは明日に回そう。お前に予定がないのなら」 「……うん」  縋り付いてくる小さな身体を抱き上げる。  頬を擦り寄せられて、驚いた。  ――無意識だろうが――……、  この子には、嫌われているものかと思っていたのだが。  細い子だ、と思った。  見た目からして華奢な体つきだが、それ以上に軽い。 「デイヴィス」  きちんと食べているのか、  思わず出そうになる小言を飲み込む。  身を守るように身体を丸める子供を連れて、ソファへと移った。  本当ならベッドに寝かせてやるのが一番なのだろうが、まさか隣で横になるわけにもいかない。  強く握りしめられたシャツは、この子が起きる頃には皺になっているだろう。  聞こえ始めた寝息に、小さく声をかける。 「良い夢を見られるといいな、デイヴィス」  それから、 「……ゆっくりおやすみ」  目が覚めたら、いつもの悪態がつけるほどには回復しているといい。  照れ隠しの可愛い言い訳になら、幾らでも付き合ってやろう。  そしてもし叶うのならば、  いつかの時に、彼の隠した小さな本音を聞かせてくれればいい。 「……まったく」  そう願っても、きっと私はこの先も、ことあるごとにこの子を叱ってしまうのだろう。  甘えるのが下手な、この寂しがり屋を。 (一部抜粋)