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秘密の裏稼業7 新刊 A5/P48 務赤前提安赤 オメガバース本 (本文より) 「零君。今日はやめておこう」 生乾きの髪からしたたる雫をタオルで拭きながら、赤井は、眉を顰めてそう言った。 バスローブの合わせからすっかり桃色に上気した風呂上がりの首筋がのぞくのが、いやに煽情的だ。 ごくりと唾を飲む。 それを知ってか知らずか、赤井は薄緑の瞳をわ ずかにすがめ、 「俺は、しばらく自室で寝ることにするよ」 はふ、と小さな欠伸を噛み殺して、言った。 「おやすみ、零君。良い夢を」 降谷零が赤井家に息子同然の扱いで迎え入れられてから、二ヶ月目のことだった。 ここ――つまり、この二人の寝室――とは別に、赤井も降谷も、各自の私室を持っている。 だから、赤井が自室で寝るというのなら、それはそれで構わない。 だが。 二人が部屋を分けているのは、主に降谷の職務上の都合からである。 余程降谷の帰りが遅くなれば自室で寝ることもあるが――まさか、赤井の方からそれを提案されるとは思ってもみなかった。 「は? なんだそれ」 思わず声に出てしまったのも、致し方ないことだろう。 「理由を言えよ、理由を」 赤井の首元を掴んで振り回したい衝動に駆られるのを抑えこんで、問い詰める。 「理由……理由が必要か?」 「当たり前だ。いきなり寝室を別にすると言われたって、納得できるはずがないだろう」 風呂に向かうまでは、赤井の方だって、確かにセックスに乗り気だったはずなのだ。 この一時間程度で、何があったというのか。 ともあれ、だ。 もうすっかりヤる気満々で待ちかまえていたところへ、突然の『やめよう』だけで、降谷が納得できるわけもない。 「赤井、何か怒ってるのか?」 降谷自身に、その心当たりはない。 だが、失言や失態というのは、えてしてそういうものである。 一番風呂は譲ってやったから、そこに文句を言われる筋合いはないし、まさか一ヶ月前に祭りのくじ引きで当てた黄色いアヒルのゴム製人形を捨てたからといって、大の大人が機嫌を損ねることもないだろう。 とすると、夕食の時に赤井の皿だけピーマンをひとつ多くしたのがばれたのかもしれない。赤井は野菜が大嫌いだ。カレーやシチューはごろごろ野菜が入っているものを好むくせに、単体となると、からっきしである。 いや、だが、風呂上がりだというのをヒントにするならば、変えたばかりのシャンプーがお気に召さなかったという可能性もあるだろうか。 それとも、他に何か原因があるのか。 (一部抜粋)

秘密の裏稼業7 新刊 A5/P48 務赤前提安赤 オメガバース本 (本文より) 「零君。今日はやめておこう」 生乾きの髪からしたたる雫をタオルで拭きながら、赤井は、眉を顰めてそう言った。 バスローブの合わせからすっかり桃色に上気した風呂上がりの首筋がのぞくのが、いやに煽情的だ。 ごくりと唾を飲む。 それを知ってか知らずか、赤井は薄緑の瞳をわ ずかにすがめ、 「俺は、しばらく自室で寝ることにするよ」 はふ、と小さな欠伸を噛み殺して、言った。 「おやすみ、零君。良い夢を」 降谷零が赤井家に息子同然の扱いで迎え入れられてから、二ヶ月目のことだった。 ここ――つまり、この二人の寝室――とは別に、赤井も降谷も、各自の私室を持っている。 だから、赤井が自室で寝るというのなら、それはそれで構わない。 だが。 二人が部屋を分けているのは、主に降谷の職務上の都合からである。 余程降谷の帰りが遅くなれば自室で寝ることもあるが――まさか、赤井の方からそれを提案されるとは思ってもみなかった。 「は? なんだそれ」 思わず声に出てしまったのも、致し方ないことだろう。 「理由を言えよ、理由を」 赤井の首元を掴んで振り回したい衝動に駆られるのを抑えこんで、問い詰める。 「理由……理由が必要か?」 「当たり前だ。いきなり寝室を別にすると言われたって、納得できるはずがないだろう」 風呂に向かうまでは、赤井の方だって、確かにセックスに乗り気だったはずなのだ。 この一時間程度で、何があったというのか。 ともあれ、だ。 もうすっかりヤる気満々で待ちかまえていたところへ、突然の『やめよう』だけで、降谷が納得できるわけもない。 「赤井、何か怒ってるのか?」 降谷自身に、その心当たりはない。 だが、失言や失態というのは、えてしてそういうものである。 一番風呂は譲ってやったから、そこに文句を言われる筋合いはないし、まさか一ヶ月前に祭りのくじ引きで当てた黄色いアヒルのゴム製人形を捨てたからといって、大の大人が機嫌を損ねることもないだろう。 とすると、夕食の時に赤井の皿だけピーマンをひとつ多くしたのがばれたのかもしれない。赤井は野菜が大嫌いだ。カレーやシチューはごろごろ野菜が入っているものを好むくせに、単体となると、からっきしである。 いや、だが、風呂上がりだというのをヒントにするならば、変えたばかりのシャンプーがお気に召さなかったという可能性もあるだろうか。 それとも、他に何か原因があるのか。 (一部抜粋)